マンション大規模修繕工事の最新動向

時代の波に乗る大規模修繕戦略
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こんにちは!事務所が渋谷にある、渋谷貴博です。

私は35年間マンション業界で働いてきました。またプライベートでは、マンション(埼玉県さいたま市・総戸数812戸)に住んで、修繕委員、副理事長、理事長経験があります。そんな私が管理組合役員の皆さまの役に立つ情報を発信します。

― 2023年〜2025年に起きている構造変化を読み解いて、時代の流れに上手に乗っていこう ―

第1章 工事費高騰という新たな常態化

1-1  直近2年間で約16%上昇という現実

2023年から2025年にかけて、マンション大規模修繕工事費は急激な上昇局面を迎えました。一般財団法人経済調査会が公表している「マンション修繕費指数」によれば、このわずか2年間で修繕費は約16%上昇し、統計開始以降でも最大級の伸び率を記録しています。2025年時点における平均修繕費は150.6万円/戸とされ、2013年頃と比較すると明らかに高い水準にあります。

この数字は単なる一時的な物価上昇ではなく、構造的なコスト上昇を示しています。管理組合にとっては、過去の単価を基準にした予算感覚が通用しない時代に入ったことを意味しています。

工事費の上昇が一時的な変動ではなく、統計上も確認できる動きであることを示すため、以下の資料もあわせてご参照ください。

《参考》一般財団法人 経済調査会が公表する「マンション修繕費指数」
https://www.zai-keicho.or.jp/wp-content/uploads/2025/09/20250904.pdf

1-2  上昇の背景にある構造要因

工事費上昇の背景には、複数の要因が絡み合っています。第一に建設資材価格の高騰があります。世界的な需給バランスの変化や物流コストの増加により、塗料、防水材、鋼材などの価格が上昇しています。第二に深刻な職人不足です。技能者の高齢化と若年層の入職減少により、熟練工の人件費は上昇傾向にあります。第三に足場関連費用の上昇です。安全基準の強化や施工体制の変化により、足場費用も増加しています。

これらの要因は短期的に解消される見通しが立ちにくく、工事費は「高止まり」する可能性が高いと考えられます。したがって、管理組合は値下がりを待つのではなく、高騰を前提にした資金計画と発注戦略を構築する必要があります。

第2章 修繕周期の再定義と分散化の進展

2-1  12年固定から劣化対応型へ

従来、多くのマンションでは12年周期が一つの標準とされてきました。しかし近年では、この固定的な考え方が見直されています。国土交通省の各種調査でも、マンションの規模や仕様、劣化状況に応じて柔軟に周期を設定する事例が増えていることが示されています。

外壁、屋上防水、鉄部塗装、シーリングなどは、それぞれ劣化速度が異なります。すべてを同一タイミングで実施する合理性は必ずしも高くありません。劣化診断の結果に基づき、部位ごとに最適なタイミングを判断する「劣化対応型修繕」へと移行しつつあります。

2-2 分散修繕と周期延伸の広がり

修繕積立金不足が顕在化する中、周期を15年から18年程度に延伸する検討も増えています。ただし単純な先送りではなく、屋上防水のみを先行実施し、鉄部塗装は中間年に行うなど、分散修繕の手法が一般化しています。

この方法は一度の負担を軽減できる一方、計画性が求められます。長期修繕計画をより精緻に見直し、部位別に資金配分を行う体制が必要です。今後は「何年目だから実施する」という発想ではなく、「劣化状態に基づいて実施する」という合理的判断が主流となるでしょう。

修繕積立金不足が顕在化する中、周期を15年から18年程度に延伸する検討も増えています。

第3章 長寿命化仕様とライフサイクルコスト重視

3-1  初期費用から総コストへ

工事費が高騰する中で注目されているのがライフサイクルコスト(LCC)の最適化です。従来は初期費用の抑制が重視される傾向にありましたが、近年は総支出を長期的に抑える視点が強まっています。

高耐候性塗料や長寿命型シーリング材、耐久性の高い防水システムなどの採用が増加しています。これらは初期費用こそ高くなりますが、次回修繕までの期間を延ばすことができれば、結果として総コストを抑制できる可能性があります。

3-2  30年スパンでの比較検討

理事会に求められるのは、単年度の支出比較ではなく、20年から30年単位での費用対効果分析です。安価な仕様で短周期を繰り返すのか、長寿命仕様で周期を延ばすのか。こうした選択は、将来の修繕積立金水準や資金繰りに大きく影響します。

大規模修繕は単なる修理ではなく、マンション経営の一環としての投資判断へと位置付けが変わりつつあります。

第4章 法規制と社会的要請への対応

4-1  省エネ・環境配慮の拡大

建築業界全体では、省エネルギー性能向上やカーボンニュートラルへの対応が求められています。大規模修繕の機会に断熱改修や高性能サッシの導入を検討する事例も増えています。

これらは義務ではありませんが、将来的な資産価値や光熱費削減効果を見据えた選択として注目されています。

4-2  耐震・バリアフリーへの関心

耐震基準の確認や、共用部の段差解消などのバリアフリー対応も同時検討されることが増えています。高齢化社会の進展により、安全性と利便性の向上は資産価値維持に直結します。

修繕工事は単なる原状回復ではなく、機能向上の機会として活用され始めています。

第5章 合意形成の難易度上昇と説明力の重要性

5-1  負担増による心理的ハードル

工事費高騰は区分所有者の負担増につながります。その結果、合意形成は以前よりも難しくなっています。追加徴収や借入の提案が出る場合、慎重な説明が不可欠です。

理事会は単に数字を提示するだけでなく、なぜその金額が必要なのか、代替案は何か、将来への影響はどうかを丁寧に説明する必要があります。

5-2  透明性と信頼構築

住民説明会の増加やアンケート活用、修繕委員会の設置など、プロセスの透明化が重視されています。特に重要なのは情報の「見える化」です。数値だけでなく、根拠や比較資料を示すことが信頼につながります。

今後は技術力だけでなく、説明力と調整力が大規模修繕成功の鍵となります。

第6章 設計監理方式の拡大と第三者性の確保

6-1  発注方式の変化

近年、設計監理方式の採用が増加しています。この方式では、設計コンサルタントが仕様書作成や見積精査、工事監理を担い、施工会社とは独立した立場で管理組合を支援します。

工事費が高額化するほど、第三者のチェック体制の重要性は増します。

6-2 リスク低減と品質確保

設計監理方式は見積比較の公平性を確保し、工事品質の向上やトラブル防止に寄与します。透明性の確保は住民の信頼を得るうえでも不可欠です。

今後の大規模修繕は、価格交渉だけでなく、体制構築そのものが成功を左右する時代になっています。

終章 戦略的修繕の時代へ

2023年から2025年にかけての動向は、大規模修繕が新たな段階に入ったことを示しています。工事費の高騰、周期の柔軟化、長寿命化仕様の拡大、社会的要請への対応、合意形成の難易度上昇、そして発注方式の高度化。これらはすべて、管理組合により高度な判断力を求めています。

これからの大規模修繕は「決められた時期に実施する定型業務」ではなく、「将来価値を守るための経営判断」です。データに基づき、長期視点で戦略的に進める体制づくりが不可欠です。

マンションの将来を左右するのは、工事そのものよりも、事前の計画と判断の質です。今こそ、戦略的な視点で大規模修繕を再定義する時代に入っています。

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