大規模修繕工事の完全ガイド|計画から竣工までの全体像

大規模修繕工事「完全ガイド」
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皆さま、こんにちは!事務所が渋谷にある、渋谷貴博です。

35年間マンション業界一筋、またプライベートでは、埼玉県さいたま市の総戸数800戸のマンションに住んで、修繕委員、副理事長、理事長経験があります。そんな私が管理組合役員の皆さまの役に立つ情報を発信します。

大規模修繕工事の目的と全体像

マンションの大規模修繕工事は、建物の資産価値を長期的に維持し、安全で快適な住環境を守るために欠かせない重要事業です。一般的には築12〜15年を目安に初回の大規模修繕工事が実施され、その後もほぼ同様の周期で繰り返し行われます。対象となる範囲は広く、外壁や屋上防水、鉄部塗装、共用廊下や階段、バルコニー、給排水設備、駐車場や駐輪場の改修など、多岐にわたります。工事の規模はマンションの戸数や構造によって大きく異なりますが、予算は数千万円から大規模物件では数億円に達することも珍しくありません。これは、単なる部分修繕とは異なり、建物全体を対象にした総合的な改修であるためです。

大規模修繕の本質的な目的は、見た目を美しく整えることだけではありません。むしろ、建物全体の劣化を計画的に防ぎ、将来的な修繕費用の増大を抑える「予防保全」の側面が大きな比重を占めます。例えば、外壁のタイルが剥離すると、落下事故の危険性が高まり、通行人や住民に重大な損害を与える可能性があります。また、屋上防水層が劣化すれば雨水が浸入し、下階住戸や共用部分に深刻な被害を及ぼします。こうした被害は、補修費用の増加や保険適用による共用部火災保険料の増加、さらには住民トラブルの原因にもなります。大規模修繕工事は、このような事態を未然に防ぐための最善策なのです。

さらに、大規模修繕工事は単なる現状回復の場ではなく、建物の機能や価値を向上させるための絶好の機会でもあります。例えば、エントランスの自動ドア化、防犯カメラやオートロックシステムの新設、共用照明のLED化などは、居住者の安全性や利便性を向上させるだけでなく、電気代や維持管理費の削減にも直結します。外観の塗装色を変更してデザイン性を高めたり、植栽やアプローチを整備して景観を向上させることも、マンションの第一印象を良くし、中古市場での競争力を高める効果があります。

また、昨今ではバリアフリー化や省エネ改修、太陽光発電の導入など、環境や社会的ニーズに対応する改修を大規模修繕工事に組み込む管理組合も増えています。これらの付加価値工事は、一度の工事でまとめて行うことで、個別に実施するよりも費用や工期を大幅に抑えることが可能です。長期的な視点で見れば、こうした改良は建物の魅力を高め、将来的な入居希望者や購入希望者の増加につながります。

このように、大規模修繕工事は「予防保全」「資産価値向上」「居住性改善」という3つの目的を兼ね備えた、極めて重要なプロジェクトです。その規模や費用の大きさに比例して関係者も多くなり、合意形成や情報共有の重要性が増します。管理組合や理事会は、計画から実施、竣工後のアフター対応まで一貫してプロセスを管理し、住民全員の理解と協力を得ることが成功の条件となります。つまり、大規模修繕工事は単なる建物改修ではなく、マンション全体の未来を左右する「経営判断」に近い性質を持っているのです。

大規模修繕工事の計画と準備

大規模修繕工事を成功させるためには、実際に工事を始める前の計画・準備段階が全体の成否を左右します。「段取り八分、仕事二分」という言葉があるように、準備が不十分なまま進めてしまうと、費用の高騰、工期の延長、品質低下、さらには住民間の対立といった様々な問題が発生します。逆に、計画段階を徹底的に行えば、工事中のトラブルを最小限に抑え、完成度の高い大規模修繕工事を実現できます。

最初のステップは、長期修繕計画の見直しです。多くのマンションでは、新築時に30年程度を見据えた長期修繕計画が作成されていますが、物価上昇や建築資材の高騰、想定外の劣化などにより、当初の計画では実情に合わない場合が少なくありません。大規模修繕工事の実施にあたっては、最新の状況を踏まえて長期修繕計画を再評価し、必要に応じて修正します。

これに合わせて行うのが劣化診断です。これは建物の健康診断とも言える工程で、外壁や屋上、防水層、鉄部、共用部設備などの状態を詳細に調査します。診断方法には目視のほか、打診棒によるタイル浮き検査、赤外線カメラによる温度差解析、ドローンによる高所撮影などがあり、近年は非破壊検査技術の進歩により精度が高まっています。診断結果から劣化の程度や進行速度を判断し、修繕の優先順位を明確にすることが重要です。

施工方式の選定も計画段階で欠かせない決定事項です。代表的な方式には「設計監理方式」と「責任施工方式」(設計施工方式)があります。設計監理方式は、第三者である設計者が仕様書の作成から監理までを担当し、その仕様に基づき施工業者を選定するため、価格と品質の透明性が高まります。一方、責任施工方式は、施工業者(管理会社が請け負う場合も多いです)が設計から施工まで一括して請け負うため、スピード感がありますが、チェック機能が弱くなるため仕様の妥当性や追加工事の発生に注意が必要です。マンションの規模、予算、理事会の体制などを総合的に判断して方式を選びます。

施工業者の選定は、大規模修繕工事の成否を決定づける最重要プロセスです。選定基準としては、過去の大規模修繕工事の実績、専門資格を持つ技術者の有無、見積の内訳の明確さ、アフター保証の内容、経営状態の健全性、そして履行保証保険(完成保証制度)への加入状況などがあります。特に履行保証保険は、万一施工業者が工事途中で倒産した場合でも、中断した工事の再開・完成に必要な費用が保険金として管理組合に支払われます。弁護士や建築士などの専門家をしたり、残工事を引き継ぐ施工業者を紹介する完成支援業務を行うマンションあんしんセンターのような団体もあるため、こういったサービスも履行保証保険と合わせることで、より安心のリスク対策になります。

履行保証保険URL
https://mansion-anshin.com/system/

また、見積比較の際は、必ず同一条件・同一仕様で複数の施工業者に依頼し、金額だけでなく提案内容や工法の違いも精査します。価格が極端に安い業者は、一見魅力的に見えても、工事内容の省略や低品質材料の使用、追加工事による費用増加のリスクがあるため、注意が必要です。談合や不正を防ぐために、第三者コンサルタント(一級建築士事務所)を活用する方法も有効です。

住民合意形成も計画段階の大きな課題です。大規模修繕工事は金額が大きく、生活への影響も少なくないため、全員が納得して進められるよう情報共有が欠かせません。総会での正式承認を得る前に、複数回の説明会を開催し、工事の必要性、範囲、予算、工期、生活への影響、騒音や振動の対策などを丁寧に説明します。反対意見や不安の声に対しては、理事会や専門家が誠意を持って回答し、可能な限り不安を解消する姿勢が重要です。

さらに、計画段階では資金計画の見直しも行います。修繕積立金が不足している場合は、一時徴収や金融機関からの借入を検討しますが、将来の負担軽減のためには、日常的な積立金額の適正化が必要です。この資金計画を含めて総合的に準備を整えることが、大規模修繕工事をスムーズに成功へ導くための基盤となります。

大規模修繕工事を成功させるためには、実際に工事を始める前の計画・準備段階が全体の成否を左右します。

大規模修繕工事の実施と管理

施工業者と工事契約が締結され、いよいよ大規模修繕工事が着工します。しかし、この段階で管理組合や理事会の役割が終わるわけではありません。むしろ工事中こそ、品質確保と住民対応の両面で主体的な関与が求められます。施工業者に全てを任せきりにすると、仕様の省略や工程の簡略化、不要な追加工事など、後で後悔する結果になりかねません。

まず重要なのは、着工前説明会の実施です。施工業者、管理組合、監理者(一級建築士事務所など)が協力し、工事のスケジュール、施工範囲、注意事項、共用施設の使用制限、工事車両の搬入・搬出ルールなどを住民に丁寧に説明します。特に騒音や振動、粉塵といった生活への影響については、具体的な発生時間帯や軽減策を明示することが大切です。説明会では質疑応答の時間を十分に設け、住民の疑問や不安を解消しておきます。こうした事前説明の有無が、工事中の苦情件数に直結します。

工事期間中は、定例会議と現場確認を継続的に行います。理事会や監理者、施工業者が定期的に集まり、進捗状況、工程の遅れ、資材の搬入状況、天候による影響などを共有します。また、現場に足を運び、仕様書や設計図に沿った施工が行われているかを直接確認することも重要です。工事写真の記録や、是正指示の履歴を残しておくと、後のトラブル防止にもなります。

品質確保のためには、中間検査を工程ごとに実施します。外壁補修工事では、下地処理が適切に行われているか、補修材の品質が規格通りかを確認します。防水工事では、下地処理、防水層の厚み、接着状態、仕上げの精度などをチェックします。塗装工事では、下塗り・中塗り・上塗りの各工程で規定の塗布量や乾燥時間が守られているかを確認することが不可欠です。これらは完成後には確認が困難な部分であるため、工事中にしかできないチェックを怠らないことが肝心です。

工事中には、追加工事や仕様変更の要請が発生することがあります。例えば、劣化診断時には見つからなかった部位の損傷や、住民からの要望による改良などです。しかし、こうした変更は費用や工期に直結するため、理事会で十分に検討し、必要性・優先度・予算への影響を明確にしてから承認する必要があります。安易に業者の提案を受け入れると、予算オーバーや工程遅延を招きます。

住民対応も実施段階の大きな役割です。工事中はどうしても生活に影響が出るため、住民からの苦情や要望が寄せられます。管理組合は苦情窓口を明確にし、迅速かつ丁寧に対応します。また、掲示板や回覧板、メール配信などを活用し、工事の進捗や予定変更を随時共有することが、住民の不安軽減につながります。

工事が完了すると、竣工検査が行われます。竣工検査は、理事会、監理者、施工業者が立ち会い、工事の仕上がりが契約通りであるか、品質が基準を満たしているかを詳細に確認する工程です。外観の確認に加え、防水性能の試験や付帯設備の動作確認など、目に見えない部分も検査対象とします。不具合が見つかれば、引渡し前に必ず是正工事を行わせます。

竣工後は、アフター点検と保証対応が始まります。一般的に1年、2年、5年などの節目で定期点検が実施され、工事箇所に不具合があれば保証対象であれば無償で補修してもらえます。この保証対応を確実に受けるためには、工事記録や契約書、保証書を整理・保管しておくことが大切です。また、施工業者に瑕疵保険へ加入してもらうことで、施工業者は不具合の補修費用を保険金請求することができるので、より適切な補修対応をしてもらえます。万が一、不具合が発生した時に施工業者が倒産していた場合は、管理組合が直接保険金請求することができるので安心です。

瑕疵保険URL 住宅あんしん保証
https://www.j-anshin.co.jp/service/daikibo/

こうした計画的な管理とチェックを行うことで、大規模修繕工事は高品質かつスムーズに完了します。そして、住民の信頼を得ながら次回の修繕計画へとつなげられるのです。

まとめ

大規模修繕工事は、マンションの安全性、快適性、資産価値を守るための極めて重要な取り組みです。計画段階での劣化診断や施工方式の選択、業者選定、住民合意形成、そして工事中の品質管理と情報共有、竣工後のアフター対応まで、一連の流れを的確に管理することが成功の条件です。

さらに、大規模修繕工事は単なる維持管理ではなく、資産価値を高めるチャンスでもあります。外観や共用部のデザイン改善、防犯強化、省エネ化、バリアフリー化などを同時に実施することで、住民の満足度を高め、長期的な価値向上につなげることができます。管理組合や理事会は、この機会を最大限に活かし、計画的かつ戦略的に大規模修繕工事を進めていくことが求められます。

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