大規模修繕を成功に導く業者選定5つの視点

施工業者を見極める5つのポイント
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こんにちは!事務所が渋谷にある、渋谷貴博です。

私は35年間マンション業界で働いてきました。またプライベートでは、埼玉県の総戸数812戸のマンションに住んで、修繕委員、副理事長、理事長経験があります。そんな私が管理組合役員の皆さまの役に立つ情報を発信します。

大規模修繕工事の成功は「施工業者選び」にかかっている

マンションの大規模修繕工事は、管理組合にとって最も重たい事業決定のひとつです。その工事の出来栄えは、住民の暮らしやマンション全体の資産価値に直結します。だからこそ、工事を担当する施工業者の選定は、単なる「価格比較」ではなく、「信頼できるパートナー」を見つけるための経営判断として慎重に進める必要があります。

なぜそこまで施工業者選びが重要なのでしょうか。それは、大規模修繕工事にまつわる失敗の多くが、「業者選定段階での見極め不足」に起因しているからです。例えば、価格だけで業者を選び、蓋を開けたら工事の品質が悪く、わずか数年で再び劣化してしまったケースや、工事の途中で業者が倒産し、工程が中断したケースも少なくありません。

実際に、近年では建設資材の高騰や人手不足の影響もあり、財務体質が弱い建設業者の倒産リスクが現実の問題となっています。報道されていない中でも、大規模修繕工事中に業者が破綻し、各種保険や保証制度にも加入していなかったために、住民が大きな経済的損失を被ったという事例が複数報告されています。

こうした事態を防ぐには、管理組合が「経営状況」や「実務能力」「保険体制」なども含めた多角的な視点から優良施工業者を見極めることが求められます。しかしながら、理事会役員や修繕委員の多くは建築・工事の専門家ではありません。一般の住民で構成された理事会が、工事の知識や判断基準を持たずに業者選定を進めると、どうしても表面的な判断や、管理会社任せの選定になってしまいがちです。

そこで本コラムでは、これまでに数多くのマンション管理組合をサポートしてきた立場から、「施工業者の選定に失敗しないための5つの視点」をご紹介いたします。この5つの視点を押さえることで、誰もが納得できる形で大規模修繕工事を成功に導くことが可能になります。

優良施工業者を見極めるための5つの視点と判断基準

第一の視点は、「実績と専門性の確認」です。大規模修繕工事は単なる工事ではなく、マンション特有の事情、例えば住民が住みながら工事を行うという環境、共用部分の扱い、日照や通風への配慮、さらには理事会や総会との調整が求められます。こうした事情に対応できる業者かどうかは、同規模・同構造・同築年数のマンションでの修繕実績があるかを確認すればわかります。

加えて、施工体制の点でも注意が必要です。自社職人による直接施工を基本としているのか、もしくは下請けや孫請けへの外注がメインなのか。施工を丸投げする構造になっている場合、現場管理や品質管理が不十分になりやすく、責任の所在も曖昧になります。優良業者であれば、技術面だけでなく、施工体制そのものに一貫性と責任感があります。

次に重視したいのが、「提案力と説明力」です。優良な施工業者は、ただ見積書を提出するだけではなく、理事会や住民が納得できるよう、写真や図解を用いてわかりやすく説明します。また、使用する材料の特徴や耐用年数、なぜその工法を選んだのかといった根拠を、丁寧に説明できる力があります。こうした提案力の高さは、住民説明会や総会でも大きな安心材料になります。

一方で、注意が必要なのは、説明が曖昧だったり、専門用語ばかり並べて不安をあおるような話し方をする業者です。このような業者は、いざ工事中にトラブルが起こった場合にも、説明責任を果たさず管理組合を困らせることがあります。説明力のある業者は、住民からの質問にも真摯に向き合い、信頼関係を築こうとする姿勢が見て取れます。

三つ目の視点は、「経営の健全性と保険加入状況」です。いくら施工技術があっても、企業としての経営が不安定であれば、工事途中での倒産リスクが拭えません。こうしたリスクに備えるためには、発注する工事において、履行保証保険(工事途中の倒産リスク対策)、瑕疵保険(工事完了後の瑕疵リスク対策)への加入をしてくれるのかを確認することが極めて重要です。最近では、日新火災の履行保証保険住宅あんしん保証の瑕疵保険が信頼されており、これらの保険加入が施工業者の選定条件として明記されるケースも増えています。具体的には、管理組合が業者選定の入札条件に「工事着工までに日新火災の履行保証保険、住宅あんしん保証の瑕疵保険へ加入して、管理組合に保険証券を提出すること」と記載すると、保険加入手続きがスムーズに進みます。

また、経営指標として資本金や売上規模、直近の財務状況、社会保険・労災保険への加入状況なども確認しておきましょう。反社会的勢力の排除条項が契約書に明記されているか、コンプライアンス体制が整っているかも、業者の信頼性を測る基準のひとつです。

四つ目は「住民対応力」です。大規模修繕工事では、仮設足場の設置による景観の変化や、塗料の臭気、騒音、通行制限など、住民の生活に少なからぬ影響を与えることになります。そのため、住民に対する対応力が低い業者を選んでしまうと、住民のストレスが溜まり、理事会への不満が集中する事態になりかねません。

優良な施工業者は、住民説明会での対応をはじめ、現場に常駐する現場監督や案内スタッフの質にもこだわります。工事予定や注意事項を掲示板やポスティングでこまめに案内し、住民の声に迅速に対応する体制を整えている業者であれば、安心して工事を任せることができます。

そして最後の視点が、「相見積もりと比較検討の正確さ」です。多くの管理組合では、つい“価格の安さ”に目を奪われがちですが、見積金額の安さだけでは優良業者とは言えません。極端に安い業者は、見積書に必要な工事項目を省いていることも多く、後から追加工事という形で高額な請求が来る可能性もあります。

そのためには、必ず複数社(最低3社以上)から同条件・同仕様で見積依頼を行い、比較検討する必要があります。可能であれば、建通新聞などの業界専門紙を通じて公募し、広く募集をかけるのも有効です。提出された見積書は、単なる金額の多寡だけでなく、「項目の抜け漏れ」「数量や単価の妥当性」「説明のわかりやすさ」「保険加入の有無」など、多角的に分析しましょう。理事会内で評価シートを活用し、数値化して客観的に評価することもおすすめです。

優良施工業者を見極めるための5つの視点と判断基準

まとめ|施工業者選定は「管理組合の経営判断」であり、未来への投資

大規模修繕工事の成否は、どの施工業者と契約するかで大きく分かれます。業者選定は単なる発注行為ではなく、マンションの未来にかかわる「経営判断」であることを忘れてはなりません。工事の質、住民の満足度、資産価値の維持、そして万一のトラブル対応まで含め、全ては施工業者の力量にかかっています。

今回紹介した5つの視点——

  1. 実績と専門性の有無
  2. 提案力と説明力
  3. 経営の信頼性と保険体制
  4. 住民対応力
  5. 相見積と比較検討の正確さ

——をもとに、理事会が主体となって業者を比較・評価すれば、感覚的な判断に頼らず、根拠ある決定が可能になります。そしてその積み重ねが、住民から信頼される管理組合運営につながります。

大規模修繕工事という一大プロジェクトを成功させるためにも、理事会には「責任ある選定者」としての意識が求められます。どうか、拙速な判断を避け、時間と労力を惜しまず、真に信頼できる優良施工業者を見極めてください。それが、マンションの未来への何よりの投資となるのです。

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