皆さま、こんにちは!事務所が渋谷にある、渋谷貴博です。
35年間マンション業界で働いてきました。またプライベートでは、マンション(埼玉県さいたま市・総戸数812戸)に住んで、修繕委員、副理事長、理事長経験があります。そんな私が管理組合役員の皆さまの役に立つ情報を発信します。
マンションの大規模修繕工事は、多くの住民にとって日常生活に関わる重要なイベントです。工事内容やスケジュール、費用負担など、住民が関心を持つポイントは多岐にわたり、少しでも不安や疑問が残るとトラブルの火種にもなりかねません。
そのため、修繕工事の前に行う住民説明会では、「いかにわかりやすく、納得してもらえる説明をするか」が非常に重要です。今回は、説明会における効果的なプレゼンテーションの方法について解説します。
1.「情報提供」ではなく「信頼構築」が目的
まず意識すべきなのは、「住民説明会の目的」です。単なる情報の一方的な提供ではなく、住民との信頼関係を築く場であることを忘れてはいけません。
修繕工事は住民にとって「不安」と「負担」がつきまとうものです。住民説明会の役割は、それを「安心」と「納得」に変えることです。そのためには「技術的な説明」だけでなく、「住民の声に耳を傾ける姿勢」も大切です。
2.視覚的にわかりやすく構成する
住民説明会で使用するスライドや資料は、見た瞬間に内容が伝わることが理想です。特に高齢の住民も多いマンションでは、以下のような工夫が効果的です。
- 文字は大きく、簡潔に
- 専門用語は使わず、言い換える
- 図や写真を多用する(現場写真、ビフォー・アフターの比較など)
- 色分けやアイコンで直感的に理解できるようにする
例えば、「屋上防水の劣化」と言うよりも、「屋上のひび割れ部分の写真を見せる」方が理解や納得感が高まります。
3.住民説明会の流れは「物語のように」
住民が意識を集中して話を聞きやすくなるように、説明内容の構成にも工夫を凝らしましょう。おすすめの構成は以下の通りです。
① 問題提起(なぜ今修繕が必要なのか)
「長期修繕計画でそろそろ修繕実施が必要な時期なので」ではなく、「屋上や外壁に劣化が見られ、このままでは漏水や安全面のリスクがあります」など、問題意識を住民と共有します。
② 調査・診断結果の説明
「第三者による建物診断の結果、このような劣化が確認されました」と、客観的な根拠を示します。
③ 修繕の方針と内容
「どこをどのように直すのか」「どの工法を採用するのか」を、図解や写真で示します。
④ 工事期間と住民への影響
「いつからいつまで、どのような工程で進むのか」「足場や騒音、洗濯物などへの影響」など、住民の生活に関わる点は丁寧に説明をしましょう。
⑤ 費用とその根拠
最も関心が高い工事費の「費用負担」については、透明性をもって説明をしましょう。見積書の内訳や入札参加した工事会社の比較表を用いて納得感を高めましょう。また、長期修繕計画と対比して、なぜそのような工事費になったのかも、わかりやすく説明をしましょう。
⑥ 質問と意見交換の時間
「質問しやすい空気」を作ることが大切です。声の大きい住民だけが話す場にならないよう、司会進行も工夫が必要です。

4.質疑応答は「共感ファースト」で
質疑応答の場面では、思わぬ批判的な意見や厳しい質問が飛ぶこともあります。そんなときこそ、感情的にならず、共感と傾聴の姿勢が重要です。たとえば、
- NG例:「それは決まったことなので」
- OK例:「ご不安に思われるのはごもっともです。実は、○○という理由でその方法を選びました」
といったように、まず相手の気持ちを受け止めたうえで、丁寧に説明することで場の空気も和らぎます。
5.補足資料と住民フォローを大切に
説明会当日だけで住民全員の理解を得るのは難しいものです。特に参加できなかった人や、聞いたけどすぐ忘れてしまう人もいます。
そこで、
- わかりやすくまとめた説明会の配布資料
- 質問をまとめたFAQの作成
- 管理組合掲示板への貼り紙や全戸資料配布などの定期的な情報発信
といった住民フォローも重要です。「ちゃんと情報をオープンにしてくれる」という姿勢が、長期的な信頼につながります。
まとめ:住民の「不安」を「安心」に変えるプレゼンを
大規模修繕工事の説明会は、ただの報告会ではなく、住民とともに工事を進めるための第一歩です。だからこそ、丁寧で、わかりやすく、住民目線に立ったプレゼンが求められます。
技術的な知識や工事内容以上に、「私たちの声を聞いてくれる」「ちゃんと説明してくれる」という信頼感こそが、説明会を成功に導く最大のポイントです。
これから説明会を開催される管理組合の方や施工会社の方は、ぜひ本記事を参考に、住民に寄り添ったプレゼンを意識してみてください。
