こんにちは。事務所が渋谷にある渋谷貴博です。
今回は、マンション管理や修繕工事について、管理組合役員の皆さんが注意すべきポイントをお伝えします。修繕工事を進める上でのリスクや対応策を詳しく解説します。
営業マンのアピールに惑わされないために
「うちの会社は倒産なんかしません。瑕疵も発生させません!安心して工事を発注してください!」
多くの工事会社の営業マンは、このように自信満々にアピールします。その言葉を聞くと、マンション管理組合の役員の方々も「この会社なら大丈夫そうだ!」と思い込み、勢いに任せて工事会社を選んでしまうことがあります。
しかし、マンション管理組合の修繕積立金は住民全員の財産です。一時の安心感に流されることなく、冷静にリスクを見極めることが重要です。マンションの修繕工事は戸建てリフォームとは異なり、公共性が非常に高い事業です。そのため、慎重な判断と計画が求められます。
理事会がまとめた修繕工事の内容は、総会にかけられると多くの住民が深く確認せずに賛成してしまう傾向があります。「理事会が決めたのだから問題ないだろう」と信用してしまうのです。この結果、理事会が誤った判断を下しても住民全体がそのリスクを負うことになります。理事会や役員の責任は非常に大きく、安易な判断が許されないのです。
保険制度を軽視してはいけない理由
修繕工事には、倒産、瑕疵、事故といったリスクが常に伴います。こうしたリスクに備えるために、保険制度の活用が欠かせません。特に瑕疵保険は、工事費の0.4%~1%程度の保険料で加入でき、万が一の際には工事金額と同等の補償が受けられる非常に有用な制度です。数千万円から数億円規模の修繕工事に対して、数十万円程度の費用で加入できる保険で、住民全体の財産を守ることが可能です。
それにもかかわらず、保険に加入していない工事会社を選んでしまうケースは少なくありません。「保険に入らなくても大丈夫です」という営業マンの言葉を鵜呑みにすると、いざというときに管理組合が大きな損失を被ることになります。
住民のために、工事会社に瑕疵保険への加入を義務付けることは重要です。このようなリスク対策を徹底することが、管理組合役員としての責務といえるのではないでしょうか。
営業担当者の転職がもたらす問題
マンション管理や修繕工事の業界でよく起こるのが、営業担当者の転職問題です。契約時には熱心に「アフターフォローも万全です!」と約束していた営業マンが、数か月後にはすでに退職しているというケースは珍しくありません。営業マンの退職により、契約時に口約束でされた内容が白紙になることがあります。書面に記載がなければ、それは契約上の効力を持ちません。また、新たな担当者が詳細を把握していない場合、工事の進行に支障が出る可能性もあります。
こうした事態を防ぐためには、口頭での説明や約束を鵜呑みにせず、書面でしっかり記録することが大切です。書面には具体的な内容を明記し、工事会社の代表印を押印するようにしましょう。
以上を踏まえ、管理組合が押さえておくべきポイントを以下にまとめます。
- 営業マンや役員の口頭での説明をそのまま信用せず、根拠や資料を提示させること。
- 工事会社との約束事項は必ず書面に記録し、双方の代表印を押印すること。
- 「倒産しません」という営業トークを鵜呑みにせず、保険加入やリスク対策を確認すること。
- アフターフォローの内容を契約書に明記し、責任の所在を明確にすること。
- 修繕工事には専門家の意見を取り入れ、第三者のチェックを活用すること。
修繕工事は、マンションの資産価値を維持し、住民の安心を守るための重要な取り組みです。役員の皆さんが適切な判断を下すことで、住民全体の信頼を得ることができます。
役員の皆さんには、住民の財産と安全を守るための重要な役割があります。修繕工事を成功させるためにも、リスクに備え、信頼できる工事会社を選ぶことが必要です。不明点や疑問があれば、ぜひお気軽にご相談ください。
