万が一に備える“もうひとつの保険”|瑕疵保険の意義を考える

大規模修繕工事の疑問
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工事会社に保証があるのに、なぜ瑕疵保険が必要なのか?

 

私が瑕疵保険の営業をしていた頃、大規模修繕工事に関わる中で、ある管理組合の理事の方からこんな質問を受けたことがあります。

「工事会社の保証があるのに、どうして瑕疵保険に入る必要があるんですか?」

これは非常に本質的な疑問で、私自身、最初に聞かれたときには思わずうなずいてしまいました。確かに、工事会社が保証してくれるのであれば、さらに保険に入る必要性があるのかと疑問に思うのももっともです。しかし、実際の現場を見ていると、「保証」と「保険」は似ているようでまったく異なる役割を果たしており、特に修繕工事のように長期的な安心が求められる場合には、両者の使い分けが重要であることがわかります。

まず、ほとんどの工事会社は、工事中や工事完了後に発生する事故に備えて、損害賠償責任保険に加入しています。代表的なものとしては、以下のような保険があります。

  • 請負業者賠償責任保険(工事中の事故に備える保険)
    工事中に、資材の落下や機械の誤操作などにより、第三者(通行人や近隣住民など)にケガを負わせてしまったり、近隣建物のガラスを割るなど物的損害を与えてしまった場合の賠償責任を補償する保険です。
  • 生産物賠償責任保険(工事完了後の事故に備える保険)
    引き渡し後、たとえば施工した給水管から水漏れが発生し、下階の住戸に被害を及ぼしたといったような、工事完了後の不具合により第三者に損害を与えてしまった場合の賠償責任を補償する保険です。

これらの保険は歴史も長く、多くの損害保険会社が商品化しているうえ、保険代理店による積極的な営業もあって、現在では多くの工事会社が加入しています。特に、事故が発生しやすい建設業界においては、「万が一への備え」としてこうした保険が広く浸透しており、むしろ加入していない工事会社の方が珍しいと言えるほどです。

大規模修繕工事の疑問

 

瑕疵保険は“工事の質”に対する備え

 

一方、瑕疵保険はまったく性質が異なります。こちらは、工事中の事故ではなく、「工事完了後に発覚する瑕疵、施工ミス、不具合」に対して備えるものです。現実的に、工事が完了した後でも一定の割合で不具合が発生しており、タイルの浮きやシーリングの剥がれ、防水不良など、事例は多岐にわたります。補修費用も決して小さくなく、数十万円から、場合によっては数百万円、さらには数千万円規模に及ぶこともあります。

これらの補修は本来、元請け工事会社が責任を持って行うべきものですが、現場では下請けに責任を押し付けて終わりにしたり、補修そのものを曖昧にしてしまうケースも少なくありません。

元請け業者が発注者と誠実に向き合い、自社の責任として補修対応を行うべきです。しかし、実際に高額な補修費用を自社で全額負担するのは、企業にとって大きなリスクでもあります。だからこそ、瑕疵保険への加入が「本来あるべき備え」として重要になります。万が一のときでも補修費用を保険でカバーできるという安心感は、元請けにとっても、そして発注者にとっても大きなメリットです。

発注者にとって瑕疵保険のもう一つメリットがあります。元請け工事会社が倒産した場合、保証が白紙とならないように、発注者に補修費として保険金が支払われる仕組みがあるのです。10年もの長期間、工事会社が倒産した場合に備える仕組みは大きなメリットと言えます。

さらに、瑕疵保険に加入することで、保険法人が定める設計・施工基準のチェックや、第三者(主に一級建築士)による現場検査が行われます。これにより、工事中の品質もより高い水準で保たれることになります。つまり、保険によって瑕疵を「補償する」だけでなく、「未然に防ぐ」効果も期待できるのです。

瑕疵保険は国土交通省が認可した住宅専門の保険制度です。その信頼性は高く、瑕疵や倒産に特化した発注者にはとても頼もしい保険制度と言えます。

「保証があるから保険は不要」という考え方は一見合理的に見えますが、現場ではその保証が十分に機能しないケースもあるため、発注者・施工者の双方にとって、第三者の仕組みとしての瑕疵保険を活用する意義は小さくないと感じています。

これからの時代、ただ安く工事を請け負うのではなく、責任ある施工と、万が一の備えをセットで提供できる工事会社こそが信頼されるのではないでしょうか。

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