マンション大規模修繕工事に潜む倒産リスクと、備えとしての保険活用

倒産への備えとしての保険活用
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こんにちは!事務所が渋谷にある、渋谷貴博です。

私は35年間マンション業界で働いてきました。またプライベートでは、マンション(埼玉県さいたま市・総戸数812戸)に住んで、修繕委員、副理事長、理事長経験があります。そんな私が管理組合役員の皆さまの役に立つ情報を発信します。

帝国データバンクが示す建設業の高リスク実態と大規模修繕工事への影響

マンション大規模修繕工事は、建物の劣化を抑え、資産価値を維持するために12年〜15年周期で実施される重要な工事です。しかしその実態は、数千万円から数億円単位におよぶ多額の契約が動く、大規模かつ高リスクなプロジェクトです。近年では、その修繕工事の実施中に施工業者が倒産するという深刻なトラブルが全国各地で報告されており、管理組合としても「工事を無事に完了させる」という当然の前提が、揺らぎかねない状況に直面しています。

《出典》国土交通省ガイドライン 80ページ「外壁の塗装や屋上防水などを行う大規模修繕工事の周期は、一般的に 12~15 年程度」
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001747006.pdf

帝国データバンクが2025年2月に発表した調査レポートによると、2024年の全国企業倒産件数は前年比1,400件以上増加し、合計9,901件に達しました。これは2013年以来11年ぶりの高水準であり、企業の経営基盤が大きく揺らいでいることを示しています。その中でも特に倒産件数が多い業種が建設業であり、倒産リスクの高い企業(倒産予測グレードが下位の8~10に分類される企業)の数は、建設業で28,817社にのぼるとされています。これは業種別で最も多く、全体の構成比でも約18%を占めています。

《出典》Yahoo! Japanニュース「建設業の倒産、4年連続で増加 過去10年で最多ペース」https://news.yahoo.co.jp/articles/9c3e96ef6a009e95cf7b33bfd148a6e4a3014577

このように建設業界全体が厳しい経営環境に置かれている中、大規模修繕工事を請け負う中小の施工業者も例外ではありません。近年は資材価格や人件費の高騰により利益率が大幅に圧迫され、業者によっては受注した工事の履行中に資金が枯渇し、工事途中で倒産に至るケースも実際に発生しています。特に、職別工事業と呼ばれる足場、防水、外壁補修、塗装、電気設備等を専門とする企業は、その多くが中小規模であり、資金繰りや受注バランスが崩れると経営破綻のリスクが高くなる傾向があります。

倒産が発生すると、工事は即座にストップし、未完了部分の施工を引き継ぐ新たな業者探し、追加費用の確保、場合によっては瑕疵の発生や現場放棄への対応など、管理組合に多大な負担と混乱がのしかかります。中断期間が長引けば、住民からの不満も高まり、理事会の信頼も揺らぐ恐れがあります。つまり、倒産リスクとは「まさか」の出来事ではなく、統計的に十分に起こり得る現実的な脅威なのです。

こうした背景を踏まえ、今や大規模修繕工事の発注において「価格」や「実績」だけではなく、「倒産への備え」こそが最も重要な選定条件となってきています。

履行保証保険と瑕疵保険で管理組合が取れる現実的な倒産対策

施工業者の倒産リスクを現実的に回避・軽減するために注目されているのが、「履行保証保険」と「瑕疵保険」の活用です。これらはそれぞれ、工事の途中と完了後という異なるリスクに対応する保険制度であり、管理組合のリスクマネジメントにとって今や不可欠な仕組みとなっています。

まず、履行保証保険については、日新火災海上保険株式会社と一般社団法人マンションあんしんセンターが共同開発した制度が代表的です。この保険は、万が一施工業者が工事中に倒産した場合に、工事の継続・再開に必要な追加費用や出来高差額、再施工にかかる手配費用などを一定額補償するものです。保険料は施工業者が負担する形ですが、管理組合が入札条件として「履行保証保険加入を必須」と明記することで、保険に加入可能な財務健全な業者を選定しやすくなるという効果もあります。

特筆すべきは、この制度における事前の審査制度です。日新火災の履行保証保険に加入できる施工業者は、保険会社による厳格な財務・信用審査をクリアしている必要があります。したがって、履行保証保険の活用は、単に「倒産時の補償」だけでなく、「倒産しにくい業者の絞り込み」にも有効なのです。2025年現在、この保険に対応可能な審査合格業者は全国で70社以上にのぼり、特にマンション修繕に特化した中堅優良企業が揃っています。

また、工事後に欠陥(瑕疵)が見つかった場合の備えとしては、「住宅あんしん保証」の瑕疵保険があります。この保険は、外壁タイルの剥がれ、漏水、配管トラブルなどの構造的な欠陥に対して補修費用をカバーする制度であり、施工業者が倒産した場合でも、管理組合が直接保険金を請求することができます。これは、完成後の不具合に関する責任が業者側で果たされない事態へのリスクヘッジであり、アフターサービスの信頼性向上にもつながります。

さらに、瑕疵保険に加入するためには、保険法人による工事中の中間検査や完了検査が義務づけられるため、工事品質そのものも高まるという副次的なメリットも得られます。言い換えれば、瑕疵保険は品質保証と倒産時リスクのダブル保険として、管理組合にとって非常に有益な制度といえます。

履行保証保険や瑕疵保険についての詳しい情報は、以下の公式ページからご確認いただけます。

いずれの保険も、単に「備え」のための制度ではなく、業者選定の透明性を高め、信頼できるパートナーを絞り込むためのツールでもあります。保険加入の有無を、見積条件や入札基準に明記することは、管理組合にとって将来のトラブルを未然に防ぐ非常に有効な対策といえるでしょう。

修繕工事会社の一覧

まとめ

マンションの大規模修繕工事における業者倒産のリスクは、もはや想定外ではなく、統計的にも十分起こりうる現実的な課題です。帝国データバンクの最新調査により、建設業が最も高い倒産リスクを抱える業種であることが明らかになった今、管理組合としても「価格」や「実績」だけで業者を選定する時代は終わりを迎えつつあります。

そのような中で、履行保証保険(日新火災)と瑕疵保険(住宅あんしん保証)は、施工業者の倒産リスクと工事品質リスクの両方に備える、現実的で信頼性の高い手段です。とくに履行保証保険は、工事中の万一のリスクをカバーするだけでなく、そもそも倒産リスクの低い業者を選ぶ基準としても非常に有効です。加えて瑕疵保険は、工事後の不具合発生に備えるのみならず、保険法人による現場検査を通じて施工品質を高める効果も期待できます。

今後、管理組合が大規模修繕工事を発注する際には、こうした保険制度の活用を前提とした業者選定と、入札要件への明記が標準となっていくでしょう。「万が一に備える」ことが、安心・安全な修繕の第一歩です。理事会主導で積極的に情報を収集し、制度を活用し、後悔のない修繕を実現していただきたいと思います。

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