こんにちは!事務所が渋谷にある、渋谷貴博です。
私は35年間マンション業界で働いてきました。またプライベートでは、マンション(埼玉県さいたま市・総戸数812戸)に住んで、修繕委員、副理事長、理事長経験があります。そんな私が管理組合役員の皆さまの役に立つ情報を発信します。
今回ご紹介するのは、実際にマンション管理組合が火災保険の見直しを行い、保険料の大幅な削減につなげた事例です。どのような点を見直したのか、具体的なポイントをわかりやすく解説します。
共用部火災保険の値上がりがマンション管理組合の大きな負担になっている
▶ここ数年で大きく上昇したマンション火災保険料
近年、多くのマンション管理組合で大きな課題となっているのが、共用部火災保険料の値上がりです。マンションの共用部分を守る火災保険は、管理組合にとって欠かすことのできない保険ですが、ここ数年で保険料が大幅に上昇しており、管理組合の財政を圧迫する要因となっています。
その背景には、台風や豪雨などの自然災害の増加があります。近年は大型台風や集中豪雨による被害が全国各地で発生しており、保険会社では自然災害による保険金支払いが急増しています。そのため保険会社では保険制度を維持するために保険料の見直しを行っており、結果として火災保険料が引き上げられているのです。
さらに、建築資材や建設工事費の高騰も影響しています。マンション火災保険では建物を再建するための費用である「再調達価格」を基準として保険金額が設定されますが、近年は建築コストが上昇しているため、この再調達価格も高くなり、結果として保険料の上昇につながっています。
実際に、10年前と比較してマンション共用部火災保険料が大幅に上昇しているケースは少なくありません。管理組合によっては、保険料が1.5倍から2倍近くになっている例も見られます。その結果、管理費や修繕積立金の負担が増え、マンション財政の健全性に影響を与えるケースも増えています。
しかし一方で、火災保険の契約内容を適切に見直すことで、保険料を大きく削減できるケースもあります。今回は実際にマンション共用部火災保険料を約50%削減することができた管理組合の実例を紹介し、その具体的な見直し方法について解説します。
こうした保険料上昇の背景については、損害保険料率算出機構が公表している火災保険参考純率の改定資料も参考になります。
《参考》損害保険料率算出機構「火災保険参考純率 改定のご案内」
https://www.giroj.or.jp/news/2023/20230628_1.html
事例マンションの概要
▶築25年のマンションで起きた保険料の大幅値上げ
今回紹介するマンションは、首都圏にある中規模マンションです。築年数は約25年で、総戸数は約70戸、エレベーターが1基設置されている一般的な都市型マンションです。
このマンションでは共用部火災保険を長年同じ保険会社で契約しており、保険契約は更新のたびに継続されていました。しかし、契約内容についてはほとんど見直しが行われておらず、契約条件は長年据え置かれている状況でした。
ところが、保険更新のタイミングで提示された保険料は、従来より大幅に値上がりしていました。これまでの年間保険料は約200万円でしたが、更新時には約260万円まで値上がりする見込みとなっていたのです。
この値上げは管理組合にとって大きな負担となるものであり、管理費や修繕積立金の財政にも影響を与える可能性がありました。そのため管理組合では、このまま契約を更新するべきか、それとも保険契約の見直しを行うべきかについて検討を始めることになりました。
そこで管理組合では、専門家のアドバイスを受けながら現在の保険契約内容を詳しく確認し、必要な見直しを行うことになりました。
保険見直しの第一歩は補償内容の確認
▶過剰な補償内容が保険料を押し上げていた
保険契約の内容を詳しく確認したところ、このマンションでは補償内容が過剰になっていることが分かりました。長年契約を更新してきた結果、実際のリスクに比べて必要以上の補償が付帯されていたのです。
例えば、建物の保険金額が実際の再調達価格よりも高く設定されており、その結果として必要以上に高い保険料を支払っている状態になっていました。また、補償内容についても過去の契約内容がそのまま残っており、現在のマンションの状況と必ずしも一致していない部分がありました。
マンション火災保険では、建物を再建するために必要な費用である再調達価格を基準として保険金額を設定することが一般的です。しかし建物の評価を見直さないまま契約を更新していると、実態より高い保険金額が設定されたままになってしまうことがあります。
このマンションでも建物評価を見直した結果、保険金額を適正な水準まで引き下げることができました。これにより保険料の削減につながることが確認されました。

免責金額の設定による保険料削減
▶小さな事故は自己負担とする合理的な考え方
次に検討されたのが免責金額の設定です。免責金額とは、保険事故が発生した場合に管理組合が自己負担する金額のことを指します。
従来の契約では免責金額が低く設定されていたため、小さな事故でも保険金が支払われる仕組みになっていました。しかし、その分保険料が高くなっていました。
マンション管理では、小規模な事故や軽微な修繕については管理費や修繕積立金で対応するケースも多くあります。そのため、すべての事故を保険で対応する必要があるとは限りません。
そこで管理組合では、小規模な事故については自己負担とすることを前提に免責金額を引き上げることにしました。この見直しによって保険会社のリスク負担が軽減されるため、保険料を下げることが可能になりました。
免責金額を適正な水準に設定することは、マンション管理において合理的なリスク管理の方法の一つといえます。
複数の保険会社を比較することの重要性
▶同じ補償内容でも保険料は大きく異なる
保険見直しの過程では、複数の保険会社から見積もりを取得しました。その結果、同じような補償内容であっても、保険会社によって保険料が大きく異なることが分かりました。
保険会社によってマンションのリスク評価や保険料算定の考え方が異なるため、保険料に差が生まれることは珍しくありません。しかし、長年同じ保険会社と契約しているマンションでは、このような比較が行われていないケースが多くあります。
今回の見直しでは複数社の保険条件を比較した結果、最も条件の良い保険会社を選ぶことができました。保険会社を比較することは、保険料削減のために非常に重要なポイントです。
見直しの結果50%の保険料削減を実現
▶年間200万円の保険料が100万円に
これらの見直しを行った結果、このマンションでは共用部火災保険料を大幅に削減することができました。
従来の年間保険料は約200万円でしたが、見直し後の保険料は約100万円となり、結果として約50%の削減を実現しました。
補償内容を大きく削減したわけではなく、補償内容を適正化し契約条件を見直したことで、この大きな削減が可能になりました。
この削減効果は管理組合の財政にとって非常に大きく、年間100万円以上の資金を他の用途に活用できるようになりました。
削減した資金の活用方法
▶修繕積立金の充実につながった
このマンションでは削減された保険料を修繕積立金に充当することにしました。築年数が進んだマンションでは、大規模修繕工事の費用が大きくなるため、修繕積立金の確保が重要になります。
今回の保険見直しによって生まれた資金を修繕積立金に回すことで、将来の修繕工事に備えることができるようになりました。
マンション火災保険を見直す際のポイント
▶定期的な契約見直しが重要
マンション共用部火災保険は、一度契約すると長年同じ内容で更新されることが多い保険です。しかし、建物の状況や社会環境は年々変化しています。そのため、定期的に契約内容を見直すことが重要です。
特に確認すべきポイントは、保険金額の適正性、補償内容の妥当性、免責金額の設定、そして複数保険会社の比較です。これらを見直すことで、保険料を大きく削減できる可能性があります。
まとめ
▶火災保険の見直しは管理組合の重要な経営判断
マンション管理組合にとって共用部火災保険は重要なリスク対策ですが、契約内容を見直すことで大きなコスト削減につながる可能性があります。
今回紹介したマンションでは、補償内容の適正化、免責金額の設定、保険会社の比較を行うことで、保険料を約50%削減することができました。
このような見直しは、管理費の負担軽減や修繕積立金の確保にもつながります。マンション管理組合では火災保険を単なる保険契約としてではなく、マンション経営の重要な要素として定期的に見直すことが大切です。
適切な保険契約を選ぶことで、マンションの安全性を確保しながら管理組合の財政を健全に保つことが可能になります。





