マンション共用部火災保険、管理組合はこの10項目をチェックすべき

マンション保険、失敗しない10項目
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皆さま、こんにちは!事務所が渋谷にある、渋谷貴博です。

35年間マンション業界で働いてきました。またプライベートでは、マンション(埼玉県さいたま市・総戸数812戸)に住んで、修繕委員、副理事長、理事長経験があります。そんな私が管理組合役員の皆さまの役に立つ情報を発信します。

マンションの共用部に関して加入する火災保険は、単なる“保険”ではなく、建物全体の価値と安心を守るための最後の防衛ラインと言われています。火災や風水害、地震、漏水など、どれだけ日常的に管理を行っていても、突発的な事故や災害を完全に防ぐことはできません。そのため、火災保険は修繕積立金と並ぶ、マンション管理組合にとって不可欠な資金リスク対策といえます。

しかし現実には、「共用部の火災保険は長年同じ契約を続けている」「更新時に保険代理店の言うとおりにしている」という管理組合が多く、実際のリスクや建物状況に即していない契約が非常に多く見られます。とくに築15〜30年を経過したマンションでは、建物老朽化により災害リスクが上昇しているにもかかわらず、保険金額が古い評価のまま据え置かれているケースがほとんどです。

ここでは、管理組合が火災保険を見直す際にチェックすべき10の重要項目を、3つの視点で整理をして詳しく解説します。
この記事を参考にすることで、「万一のときに保険が本当に機能する」契約へと見直すきっかけになるでしょう。

1.補償範囲の正確な理解と、漏れのないリスクカバー

最初に押さえるべき基本は、「どこからどこまでが共用部として保険対象になるのか」という範囲の明確化です。
火災保険の対象範囲は、一般的にエントランスホール、廊下、階段、外壁、屋上、エレベーター、機械室、受水槽、ポンプ室、駐車場、フェンス、掲示板などです。つまり「区分所有者全員で共有している部分」が対象であり、専有部の壁紙や床、キッチン、浴室などは含まれません。ただし、管理組合が誤解しやすいのが「専有部との境界」と「共用設備の扱い」です。

たとえば、パイプスペース内の給排水管は専有か共用か、エアコンの室外機はどちらに属するかといった判断が分かれることがあります。このため、保険加入時や見直し時には、設計図書や管理規約に基づいて対象範囲を正確に確認することが重要です。また、火災保険といっても、実際には火災だけでなく落雷、破裂・爆発、風災、雪災、水災、盗難、破損、汚損など多くのリスクをカバーできます。

とくに近年は、異常気象による豪雨・強風被害が全国的に多発しており、「風災・水災補償を外した契約」は極めて危険です。実際に、台風による外壁タイルの剥落、エレベーター機械室の浸水、地下駐車場の冠水などが頻発しており、保険の対象外だったために、管理組合が自己負担をしなければならず、修繕積立金から数千万円単位の支出を余儀なくされた事例もあります。

また、地震保険の扱いにも注意が必要です。地震保険は火災保険とセットでしか契約できません。これは通常の火災保険では地震・噴火・津波による被害は火災保険の補償外だからです。火災保険とセットで地震保険を契約することで地震による被害が対象になります。
外壁やエレベーター設備にクラック(亀裂)が生じるといった軽微な被害でも、地震保険を活用できるケースがあります。

補償の上限は建物評価額の50%が上限ですが、地震保険があるかないかで復旧スピードが大きく変わることを理解しておきましょう。さらに、共用部に付属する電気設備や貯水槽、機械式駐車場などの「動産設備」が保険対象になっているかも要チェックです。

これらは「建物附属物」として扱われる場合と、「設備機器」として別枠契約が必要な場合があり、特に機械設備の故障補償が未加入のままになっているケースが多いのが実情です。共用設備のトラブルは修繕積立金の負担に直結するため、契約範囲の抜け漏れがないよう精査が必要です。

2.保険金額と評価額の適正化で、過不足のない契約に

次に重要なのが、保険金額=建物評価額の見直しです。
火災保険の支払上限となるこの金額が、実際の再建築費とかけ離れていると、災害時に十分な保険金を受け取れません。多くの管理組合では、築年数が20年以上経過しても契約金額をそのまま据え置いており、結果的に「保険金が足りない」=過少保険になっています。

たとえば、10年前に1億円で設定した保険金額のままだと、現在の建設単価上昇を反映できていません。資材や人件費の高騰により、再建築費は平均で30〜50%上昇しており、1億円の建物なら1億3000万円以上が実勢価格となるケースが多いのです。この状態で災害が発生した場合、損害額が1000万円でも「保険金は700万円しか支払われない」といった比例てん補が発生します。逆に、過大な金額で契約しても、保険金は実際の損害額を超えて支払われることはありません。

つまり、「高ければ安心」というものではなく、“適正な評価額”で契約することが最も合理的です。建物評価を見直すには、保険会社が提供する「再調達価格評価」や、「マンション保険専門コンサルタントによる鑑定」などが有効です。構造(RC造・SRC造)、延床面積、建築年、設備グレード、立地条件などを反映した最新の評価をもとに再設定すべきです。

また、共用部の火災保険では「建物本体」以外の補償対象を見落としやすい点も注意が必要です。外構、フェンス、照明、看板、機械式駐車場、受水槽、給水ポンプ、外灯などが契約範囲に含まれていない場合、それらが損壊しても保険金が支払われません。さらに、評価額の見直しは修繕積立金計画との整合性も考慮することが重要です。

たとえば、外壁補修費が将来の大規模修繕で確保されているなら、火災保険で重複する補償を削ってコストを最適化できます。一方、老朽化による配管漏水などが頻発しているマンションでは、機械・設備特約を追加することでリスク低減が図れます。つまり、「建物の現状」と「修繕計画」と「保険の補償内容」を総合的に照らし合わせ、保険金額・補償範囲・特約をトータルで再構築することが、管理組合のリスクマネジメントに直結するのです。

3.管理組合が見落としがちな特約・見直し時期・保険料節約策

火災保険の更新時に意外と見落とされるのが、特約の有無と契約更新タイミングです。
特約は、災害発生時の「追加費用」や「付随被害」を補う重要な役割を持ちます。しかし、内容を理解しないまま「必要ない」と判断して外してしまうと、思わぬ出費を招きます。たとえば、漏水による他室損害補償特約。共用配管からの漏水で住戸内の天井や床が濡れた場合、この特約があれば修繕費を保険でまかなえます。未加入だと、管理組合が自己負担で賠償しなければならないこともあります。

また、臨時費用保険金特約は、災害時に仮設フェンス設置や瓦礫撤去、応急修理などを行う際に役立ちます。機械設備補償特約では、エレベーターやポンプなどの機械的故障をカバーでき、突発的な停止トラブルにも備えられます。さらに、失火見舞金特約を付けておけば、他人の所有物に損害を与えた際にお見舞い金を支払うことも可能です。

次に、契約期間の短縮傾向にも注意が必要です。以前は「5年契約」が一般的でしたが、近年は自然災害の増加を受け、保険会社がリスク管理を厳格化しています。そのため、更新時ごとに複数社から見積もりを取得して比較して、適切な保険商品に切り替えていくことが、保険料の節約に直結します。

また、マンションの維持管理体制によって保険料が変動する点も見逃せません。たとえば、ある保険商品では、マンション管理の適正化について診断(劣化状況・修繕履歴・管理体制など)を受けることで割引が適用されます。管理状態が良好であれば、最大で10%以上の保険料削減が可能になるケースもあります。

一方で、管理体制が不十分だと、逆にリスク評価が上がり、保険料が増額されることもあります。つまり、「日常の管理が良いマンションほど、火災保険でも優遇される」という時代に入っているのです。見直しの最適タイミングは、大規模修繕工事の完了時や修繕積立金計画の更新時です。建物の状態や工事内容を踏まえたうえで補償内容を再設定すれば、ムダを削りながらリスク対策を強化できます。

まとめ|火災保険は“守りの修繕積立金”として機能させる

共用部の火災保険は、単なる「災害補償」ではなく、修繕積立金の延命と安定運営を支える制度的な支柱です。
もし火災や風災・水災が発生しても、適切な保険契約があれば、管理組合は慌てることなく修繕・復旧を進められます。逆に、契約内容が古く補償が不足していると、工事費の多くを積立金や臨時徴収でまかなう羽目になり、結果的に区分所有者の負担が重くなるという“二次災害”を招きかねません。

今回紹介した10のチェックポイント(補償範囲・評価額・特約・契約期間・保険料比較・建物診断割引など)を総合的に点検し、管理組合自身が主体的に契約内容を理解・管理することが重要です。

また、建物の維持管理をきちんと行うことは、劣化が原因の漏水事故等を防ぐことになり、補修費を保険金請求することが減少します。これは結果的に管理組合が負担する保険料を下げ、さらに修繕計画にも好影響を与えます——この“好循環”を生む仕組みを意識することが大切です。

火災保険は、いざという時にマンションを守る「経済的な盾」であると同時に、平時の管理意識を高める「指標」でもあります。契約内容を定期的に見直し、時代や建物の状況に合わせて最適化することで、管理組合と住民全員の安心を、長期的に守ることができるでしょう。

最後に、一般社団法人マンションあんしんセンターでは、マンション共用部の火災保険に関して取り扱いをしています。どのようなご相談でも対応いたします。下記までお気軽にご相談ください。

マンションあんしんセンター・なんでも相談コーナー
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