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マンションも、築50年が経過すると、管理組合内から、マンション建て替えの要望が出ることがあります。
実際に、鉄筋コンクリート造のマンションを、築50年で建て替えをするかは、要望がでたからではなく、建物のコンクリート躯体の劣化状況等を十分に調査・診断をしたうえで決めることとなります。
マンションは築100年まで耐えられる、という考えもあったりしますから、こういった情報ではなく、実際に皆さんのマンションが、どれだけ老朽化しているのかを建物検査で把握することが重要です。
それよりも、まず皆さんのマンションが条件的に「建て替えができるか」が、大きな問題となります。
これが、「マンションが“建て替えできるか”の分かれ道」なのです。
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相談開始から5年で等価交換マンション竣工!
西日暮里駅・徒歩3分で等価交換マンションが竣工!
旭化成不動産レジデンスは5月25日、権利者8名と共同で実施した都市共同化(等価交換)事業、アトラス西日暮里道灌山(東京都荒川区、総戸数50戸)を竣工しました。
●相談から5年のスピード竣工!
事業期間が10年以上になることも珍しくない再開発関連の事業において、このマンションは、等価交換の手法を採用したことで、なんと、相談から5年というスピード竣工ができたとののです!!
この旭化成不動産レジデンスのマンションのように、等価交換マンションとして、建て替えができるか、が分かれ道になるのです!
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■ここで、建て替え(等価交換等)に向いている既存マンション等について、3つのステップに沿って、「必要条件」を考えてみましょう。
※以下内容は、上記の「アトラス西日暮里道灌山」の経緯や内容とは関係ありません。
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●等価交換とは
協力事業者(マンションデベロッパー等)は、従前の建物等を解体し、新築マンションの建設をします。
建て替えた後の新築マンションは、マンション管理組合(区分所有者)や土地所有者など地権者たちに、一部を還元住戸として取得していただきます。
そして協力事業者は、残った住戸部分を新築マンションとして、一般消費者に販売して利益を得ます。
これにより、協力事業者が負担した、建て替え関係の費用は、新築マンションの販売による収入と相殺され、残り一部が協力事業者の利益となります。
こうして、管理組合(区分所有者)や土地所有者などと協力事業者が、同じようにメリットがある建て替え、ということで、等価交換といわれています。
このように、等価交換事業が成立するのか、が建て替えの重要な要素なのです。なぜかというと、協力事業者がいなければ、自分たちだけで建て替えをしなければならず、建て替え費用の捻出がとても難しいからです。
ようするに、「協力事業者が等価交換事業をしてくれる条件を満たしているか」が、建て替え(等価交換等)に向いているマンションかの「分かれ道」となるのです。
●ステップ1:新築マンション販売に適している立地・環境・希少性
上記のとおり、協力事業者は新築マンション販売を行うことを目的としています。ですから、「立地などが、新築マンション販売に向いているか」、がとても重要な条件となります。
・首都圏、中部圏、関西圏エリア
・東京駅、名古屋駅、大阪駅、神戸駅など、主要な駅にできるだけ近いターミナル駅
・徒歩5分以内(※場所によっては駅距離は関係ない場合があります。例:東京都心3区内など)
・今後再開発などが予定されているエリアに含まれている、または近接している。
・住環境として問題がないこと(飲み屋街、工場地域、治安が良くないなどは×)
※これ以外にも条件はあります。
これらは、皆さんがマンション購入者になったつもりで、考えてみてください。「自分は、どんな条件だったらマンションを購入するだろうか。」
これらの条件を満たしていなければ、皆さんのマンションは、立地的に条件を満たしていない、ということになります。←ここで等価交換事業の可能性は、ほぼありません。
※上記の条件を満たさない場合でも、①事業規模が非常に大きくなる、②近い将来、最寄りに駅ができる、住環境がよくなるなど、③駅から遠いが、とても希少な立地特性を持っている。など、新築マンション販売時に有利となる条件がある場合は、等価交換の対象となる場合もあります。
●ステップ2:容積率の未消化が多いマンション
皆さんのマンションの容積率(容積対象面積÷敷地面積×100)が、当該地の容積率と比べ、ほぼ同じ場合は、容積率を消化しているため、この時点で、
等価交換事業の可能性はありません。
当該地の容積率(今後容積率が緩和される予定があれば、緩和される容積率)が、現在の既存マンションの容積率と比べ、未消化の割合が多いほど、協力事業者が新築マンション販売できる住戸が増えるため、等価交換事業の可能性が増えることになるのです。
一般には、築30年以内のマンションは、ほとんど容積率を消化しているため、等価交換事業の可能性はありません。
昔の公団・公社などが分譲した団地のような形態は、容積率が未消化の可能性が高いと言われています。
また、①今後容積率が緩和される予定や、②再開発エリア内、③周辺敷地を含めた共同事業により容積率が拡大する、など特殊要因があれば、等価交換事業化の可能性も見えてきます。
★一度、役所の建築指導課などに行って、皆さんのマンションの容積率や周辺計画他について、確認されてはいかがでしょうか。
●ステップ3:新築マンション販売の売上規模
前項の容積率が未消化だとしても、もう一つ重要な条件があります。
協力事業者の新築マンション販売の売上規模です。
協力事業者が販売する住戸の総専有面積に、周辺の新築マンションの販売価格をあてはめて、例:坪単価400万円で販売できる場合→坪400万円×総専有面積・坪で計算します。
この計算結果(販売の売上高)が、15億円以上でないと、一般の協力事業者は、等価交換事業(協力事業者になること)に踏み切れません。売上規模が小さいからです。
※企業によって、この売上規模は、10億円でも良しとする会社、または20億円や30億円などスケールメリットがないと事業化しない会社など、条件は変わってきます。
その他にも諸条件はありますが、これが基本となります。
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上記のステップ1~3の条件に合致するかの可否によって、等価交換(協力事業者との建て替え)の「分かれ道」となるのです。
協力事業者との等価交換ができない場合
協力事業者と等価交換ができないと、管理組合だけで、建て替えをしなければならず、資金的に非常に負担が大きくなって、管理組合内で合意形成は困難となります。
では、どうすれば?
お金がないからと、建て替えをしないと、建物はいつか(築50年?70年?100年?)必ず朽ちてしまいます。その前に管理組合・区分所有者はどうすれば良いのでしょうか。
できるか、どうか、わかりませんが、以下のようなことも、参考にしてください。
・建て替え
資金を金融機関に借りて、何とかして建て替えをする。(今と同じ大きさの建物ではなく、できるだけサイズを絞った建物を建築することも検討が必要です。今後、一世帯の数が少人数になっていきます。そのぶん、今の専有面積より小さい住戸でも良くなる可能性が高いです。それにより、建築費を少なくすることができます。)
・敷地売却
建て替えはせず、既存マンションを解体(費用負担は管理組合・区分所有者)して、敷地を第三者に売却する。区分所有者は各々住まいを見つけ、住み替えをする。
・もう一つの方法
前記の建て替えや、解体後の敷地売却ではない方法です。
旧耐震のマンションを、外観や眺望に配慮しつつ耐震補強を行い、新しく再生する方法です。
もちろん費用は掛かるため、資金準備は必要ですが、建て替えに比べ、解体費がかからない分、節約になる方法かもしれません。
比較的、新しい方法なので、良く調べて進める必要があります。
今後、協力事業者と等価交換ができるマンションは非常に少ないと言われています。残りのマンションは、既存マンションの終活をどのように進めるか。
マンション管理組合運営の集大成です。そのためにも、日ごろから区分所有者間のコミュニティづくりを大切に育んでください!
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渋谷貴博(しぶや たかひろ)
マンションあんしんセンター(MAC)
https://mass.liblo.jp/
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